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テックワークス社員を紹介!鈴木 卓真さんってどんな人?(後編)

前編では、幼少期の暮らしから大学院での研究まで、振り返って話をしてもらいました。後編ではいよいよ、テックワークスを起業しての苦労、将来の目標、仕事を離れたところでの趣味についてお聞きしていきます。

ゼロからの挑戦とハードな日々

――大学院を出て、起業を選んだのは理由があったのですか?

鈴木:私の父親は建設業ですが、母親も喫茶店や居酒屋など飲食店を経営していました。2人とも、自分の好きなことを仕事にするっていう生き方をしていたので、僕の中では「仕事をする」ということが「どこかに就職する」というよりも、「自分のやりたいことをやる」というのが当たり前というか、それしかないと思っていましたね。だから、大学院を出て会社を作ると言った時も、誰にも反対されませんでした。むしろ「好きにすればいい」と言われたくらいです。

でも正直、何もわからないままスタートしました。大学院を卒業して、「自分で会社を作る」と決めたものの、どうやって仕事を取るのかも知らなかったんです。友人と二人で登記したのが3月3日だったんですが、その時点では仕事が何もなく、「これからどうしよう?」という状態でした。4月から地図システムの仕事を請け負う予定はあったんですが、それまでの1か月間は完全に空白。それでも「何とかなるだろう」と思っていたら、一緒に始めた友人が4日でいなくなってしまったんです。結局、地図システムの仕事も2人分を1人でやることになりました。

――スタートして4日で!それは大変でしたね。どうやって乗り越えたんですか? 

鈴木:単純に気合と根性なのですが、3月からは運良く、大学院時代の産学官連携の繋がりからハードウェア関連の仕事を紹介してもらえました。ハンダ付けの作業だったんですが、全く経験がなくても「やります!」と引き受けました。4月になると地図システムの仕事が本格的に始まりましたが、それでもハンダ付けの仕事も続いていたので、昼間は常駐してハンダ付け、夜は家で地図システムの開発という生活でした。また追い打ちをかけるように4月からは2つ大学でも非常勤講師をしていました。睡眠時間も削って何とか納期を守る日々でしたね。この時期は本当に死ぬ思いで働いていました。

苦労から得た教訓を糧に 

――起業当初の苦労から得たものとは何でしょう?

鈴木:最初の数ヶ月間で学んだ最大の教訓は、「柔軟性」と「責任感」ですね。特にエンジニアとして、自分が作ったものには責任を持つ必要があります。例えば、ユーザーが予想外の使い方をした場合でも、それに耐えられるシステム設計をしなければならない。その厳しさを最初の仕事で叩き込まれました。

また、人脈づくりも重要だと痛感しました。異業種交流会で知り合った方々との繋がりが、その後多くの仕事につながりました。例えば10年前に一緒に働いた相手から突然声をかけられることもあります。そういう経験を通じて、人との関係性を築くことがどれほど大切か今になって実感できることがたくさんあります。

――人とのつながりは、どのようにして作っていったのですか?

鈴木:大学院時代からお世話になっていた経済産業局の方が主催する会に呼ばれて、受付や写真撮影など雑用を引き受けながら多くの人と知り合いました。その中で、「名刺交換はこうやるべきだ」とか、「会社は3年以内に潰れることが多い」といった厳しい指摘も受けました。でも、社会経験ゼロの私にとってそれらすべてが勉強になりましたね。

積み重ねてきた今思っているのは、「この人と本当に仕事したいと思えるか」という直感を大事にすることです。違和感を覚える相手と無理して仕事すると、大抵うまくいかないんですよね。それ以降、自分が信頼できると思える相手との関係性を大切にしています。

TEDxSapporoと若者支援

――会社経営の一方、教育や若者支援にも力を入れておられますが、その背景にはどんな思いがあるのでしょう?

鈴木:教育分野への関心は、大学院時代から自然と芽生えたものですね。大学院を出た後、北海道科学大学や札幌大学で非常勤講師を務めてきたのですが、プレゼンテーションやコンピュータサイエンスの授業を通じて、若い世代と接することができたのは貴重な経験でしたね。特にTEDxSapporoに関わるようになってからは、自分の考えがさらに明確になりました。TEDxの理念である「価値あるアイデアを広める」というコンセプトに共感し、それをどう若い世代に伝えるかを考えるようになったんです。

――TEDxSapporoでは高校生チームも運営されていますね。それはどのような意図から始まったのでしょうか?

鈴木:アイデアを広めるなら、若い世代に伝える方が社会全体への影響力が大きいと思ったんです。年配の方々に伝えることももちろん大切ですが、その影響はその人自身で終わってしまう可能性があります。でも、若者はこれから社会に出て、多くの人々と関わっていく。TEDxで受け取ったアイデアが彼らを通じて広がれば、樹形図のように指数関数的に影響力が増していくんじゃないかと考えています。それで、高校生向けの招待プログラムやユースチームを立ち上げました。

最初は手探りでしたが、彼らのエネルギーや創造性には本当に驚かされましたね。彼らが自主的にイベントを企画し、成功させた姿を見ると、「自分たちももっと頑張らなきゃ」と刺激を受けます。彼らは本当にすごいですよ。例えば、高校生だけでイベントを企画して運営した時なんて、「ここまでできるんだ」と驚きました。スピーカーに対してのコーチングもしっかりできている。僕ら大人よりもむしろ優れている部分もあるんじゃないかと思うほどです。

彼らとの関係は、単なる指導者と生徒というよりも、良い意味でのライバル関係ですね。「高校生がここまでやれるなら、自分たちはもっと良いものを作らなきゃ」とお互い切磋琢磨できる存在です。このような関係性があることで、自分自身も成長させてもらっています。

CC BY-NC-ND TEDxSapporo

――TEDxSapporoでの活動は会社経営にも影響していますか?

鈴木:大きな影響がありますね。TEDxでは、多くのボランティアスタッフやチームメンバーと協働する中で、「人に委ねる」ことの重要性を学びました。それまでは何でも自分でやろうとしていたんですが、大規模なイベント運営ではそれが通用しません。役割分担や組織運営について深く考えるきっかけになりました。

この経験は会社経営にも活きています。例えば、スタッフが増えた時期には、自分がコードを書かず経営に専念した年もありました。その時、「自分は本来エンジニアなんだ」という気づきも得ましたが(笑)。それでも、人に任せることで組織全体として成長できるという感覚を得たのは大きかったですね。

技術力とチームワークで社会に貢献できる組織

――会社として今後どのような方向性を目指しているのでしょうか?

鈴木:うちの会社「テックワークス」は、まず技術力で頼られる存在になりたいと思っています。「こんな難しいことできないかな?」という相談を受けられるような会社でありたいですね。そのためにはエンジニアをしっかり育てて、技術的な柱を立てることが重要です。先日リリースしたデジタル装具手帳アプリのように、これまで関わってこなかった分野にも積極的に挑戦していきたいと思っています。ITは他の分野と結びついてこそ力を発揮するので、多様な業界との連携が不可欠ですね。

また、社会との接点を持ち続けることも大切だと思っています。例えば、「TEDxSapporo」の活動やマチヅクリ大学など、外部との関わりが会社にも良い影響を与えるんです。僕自身が部屋にこもって仕事するだけでは何も生まれませんし、社会から認知されない会社になってしまいますから。

――会社を経営されていますが、自らものづくりをすることへのこだわりはありますか?

鈴木:それはあります。先にも触れましたが一時期、コードを書くのを全てスタッフに任せて、自分は経営に専念したことがあります。でもその時、「自分はやっぱりエンジニアなんだ」と気づいたんです。コードを書いていないと健全じゃないというか、自分らしくないんですよね。それ以来、新しいスタッフが入ってきても、自分でもコードを書く時間を確保するようにしています。僕はプログラムを書く時間が好きなんです。でも、人に任せることも覚えました。それは「TEDxSapporo」の活動を通じて学んだ組織運営やチームビルディングのおかげでもあると思っています。

「簡単かつ美味しい」ベーコン作りの探求

――最後に、仕事以外の趣味についてお聞かせください。

鈴木:趣味としては、ベーコン作りをもう10年以上続けています。豚バラ肉を買ってきて塩漬けし、寝かせて塩抜きをしてから燻製をかけるという工程なんですが、これがまた奥深いんですよ。僕のテーマは「いかに手間を省いて美味しいベーコンを作るか」です。例えば、塩漬けはジップロックに入れて輪ゴムで縛り、重しには牛乳パックを使うなど、簡単な方法を工夫しています。熟成期間も好みによりますが、僕は2~3日くらいで十分だと思っています。燻製をかけるタイミングが難しいんですよね。スケジュール管理が必要で、その日に合わせて仕込みを始めなきゃいけない。でも、それも含めて楽しいんです。

前後編を通じて、鈴木さんの、そしてテックワークスのストーリーをお聞きしてきました。これらの中で「ものづくり」「新しいことへの挑戦」「人とのかかわり」といったキーワードが見えてきました。また一方で、TEDxSapporoでの活動の「価値あるアイデアを伝えたい」という強い思いもあります。若者との協働や組織運営から得た学びを会社経営にも活かしつつ、自身も成長し続けている姿勢も印象的です。今後テックワークスは何を生み出していくのでしょうか。ぜひ、お楽しみに!